朧月に願いを込めて
今週末、日曜東京のメインレースはエプソムCだが、個人的にはその1つ前のレース「多摩川S」の方が思い入れがある。
去年は出資馬のメートルダールが58kgのトップハンデを背負いながら、M.デムーロJとのコンビで見事に勝利をあげ、
降級から一発回答でOP復帰を決めてくれるという、とても嬉しいレースとなった。
ただ、そのさらに1年前、一昨年の多摩川Sは本当に悲しく、自分にとって悔いが残るレースになってしまったのだ。
一昨年の多摩川Sには、戸田厩舎所属の当時5歳の牝馬、ヘイジームーンが出走していた。
前の月の東京で勝って昇級初戦。
東京は得意のコースだけに、準オープンでもいい勝負になるはずだと期待していた。
まずはパドックに行って、それから本馬場入場を撮ったらウイナで待機して…と事前には考えていたが、
8Rに出走した出資馬アールブリュットが降級初戦を圧倒的な人気に応えて勝ったので、
ゼッケンを囲んでの記念撮影をしたり、その間荷物を預かってくれた友達と話が盛り上がったりしているうちに、もう10Rのパドックが始まってしまったことに気がついた。
ターフビジョンに流れる映像を見て、一瞬「しまった…」となったけれど、「本馬場入場を撮ればいいか~」と思い、結局パドックには行かなかった。
そしてコースにやってきたヘイジームーンと鞍上の岩田Jを連写したものの、上手くいかずに全てピンボケになってしまったのだ。
「入線したところを撮ればいいか…今日がダメでも次のレースがあるし…」
そう思ってゴール板過ぎで待機して、ゴールした各馬を連写しているうちに、ヘイジームーンがその中にいないことに気がついた。
慌てて直線の方に目をやると、遥か向こうにコース上で止まっているヘイジームーンの姿があった。
そして、それがわたしが見た最期の姿になってしまったのだ。
わたしが悔やんでいるのは写真が撮れなかったことではない。
何の保証も無いのに、「次のレースがあるから」と安易に考えてしまったことだ。
馬にも騎手にも、絶対の無事など無い。
これまでもそれを痛感させられる出来事を経験してきたはずなのに、時間の経過とともに少しずつ薄れてきてしまったのだ。
今でもそのときのこと、自分の安易な考えとヘイジームーンがいなくなってしまった悲しみを思い出すと泣きそうになる。
去年の多摩川Sでメートルダールが先頭でゴールを駆け抜けたときは、
1年前にゴールできなかったヘイジームーンの分も走ってくれたのだと思った。
遠征や他の予定もあるから、応援馬の全てのレースを現地応援できる訳ではない。
現地に行ける日でも、うっかり間に合わなくなってしまうこともある。
でもそれは自己責任だとしっかり受け止めて、出来る限り、悔いを残さないように応援を送って、写真と一緒に記憶を残す。
全人馬が無事にゴールできるように願いながら。